会いに行く、焼尻島

お盆を過ぎれば途端に秋めいてくる北海道、
るもい地域も例外ではありません。
過ぎゆく前に、夏の思い出を。
今回は、島旅行記「焼尻島」編です。

7月の半ば、天売島と焼尻島を1泊2日で旅しました。
天売島でウトウの帰巣に感動し、
齊藤さんの『島時間』を満喫した翌日、
天売島から高速船で15分ほど、お隣の焼尻島に渡りました。

さっそく腹ごしらえ。
『新沼食堂』のおかあさんが、
「ちょっと時間かかるけど、良ければ待ってて!」と、
開店準備をされているところに招き入れてくれました。

おかあさんの『わかめ天ぷらうどん』。
目の前の漁港で水揚げされたわかめを、
しっかり水洗いしてぬめりをとって、
熟練の腕でカラッと仕上げます。

新沼食堂のおかあさん

長年、島で数少ない飲食店を切り盛りするおかあさん。
島のはなし、お料理のはなし、
ご自身の生い立ちから、
婚活相談まで(島には独身男性も多くいらっしゃるそうです!笑)。
おかあさんに会いに、再び島を訪れるお客さんも。
この笑顔も、食堂の大切な味なのでしょう。

お腹を満たして島を散策していると、心惹かれる草木のトンネル…

現れたのは、『カフェ アトリエ おくむら』。

絶品のチャイは、
店主の奥村さんがインドを旅した際に最も美味しいと感じたチャイを、
ご自身で淹れているそう。
ここで休憩して、旅はおしまい…と考えていたのだけれど、

「こんなところでチャイなんて飲んでいる場合じゃないよ!」

一喝されて、オンコの原生林へ。
『島への移住を決めた景色』と言われれば、興味をひかれます。

「わたしの足で往復30分だから大丈夫!十分フェリーに間に合うよ!」

との言葉を信じてカフェを出たのですが、
陽がまばらに差し込む原生林を不安になりながら行き、
急に開けた視界に広がるオンコの荘と日本海に感動して、
再びカフェの前に戻ってきたのは40分後…完全に息が上がっていました…。
すると、わたしたちの声に奥村さんがシャッ!と窓を開け、

「帰ってきたね!ちょっと待ってなさい」

出てきたのは、アイスチャイ。

「さっきの残りだけど、これを飲んで一息ついて」

奥村さんのお人柄とチャイの美味しさに、
時間を気にしていたことも忘れて、
いま見てきた景色の感動を伝えたのでした。

半日の旅程を組んでいた焼尻島。
でも、半日では足りませんでした。
また行きたい、ばかりではなく、「会いに」行きたい焼尻島。

思わぬ出会いと感動にあふれた島旅行は、
素敵な夏の思い出です。

一般社団法人 おらが島活性化会議 代表 齊藤暢(さいとうみつる)さん

羽幌町から高速船で1時間ほど、
天売島の海をバックにお話してくれた齊藤暢さん。
彼が代表を務める「一般社団法人 おらが島活性化会議」では、
天売島で、シーカヤックをはじめとする自然体験や、
イベントに出向いて島をPRする活動を行っています。

7月の半ばに旅した際、
天売島のアクティビティと言えばこの人!と思いご連絡させていただきました。
シーカヤックをしたかったのだけれど、当日海のうねりが激しく断念…
すると齊藤さんが、島をぐるっと案内して、
オロロン鳥など貴重な海鳥観察の後、焚火でウニまで焼いてくれたのでした。

オロロン鳥の繁殖地ともなっている赤岩

通りかかったお客さんにも気さくにガイドする齊藤さん。自前の望遠鏡でオロロン鳥を見せてくれました

天売島で生まれ、
天売島で暮らす齊藤さん。
本業の傍ら、島のPRに励みます。
陽があるうちにお仕事を終えた時には、
仲間で連絡をとって、食材を持ち寄って、
海辺で焚火を起こして、
日本海に静かに落ちる陽を見ながら乾杯するのだとか。

「帰るころには、街灯のない真っ暗な島の道を、
みんなフラフラだよ」

そう言って笑う齊藤さんは、本当に幸せそう。

「そういう、島では何気ないことだけど自分たちが好きでやっていることを、
訪れる人たちにも提供したいと思ったんだよね」

ガイドのおしまいに、岩場に降り立って「木を集めてきて」と…何が始まるのかと思いきや…

木を集めて起こした火で、じっくり焼いた「焚火ウニ」。余分な水分がとんで、身が旨みをギュッと抱きこんで、少し焚火の香りがして…最高。

「島時間を楽しんで」

そう言って帰っていった齊藤さんの後ろ姿は、真っ青な空より、きらめく日本海より、眩しく感じられたのでした。

>>一般社団法人 おらが島活性化会議

先週末、旅をしてきました!
留萌市から車で1時間、
羽幌町から出港する羽幌沿海フェリーの高速船に乗り、
日本海に揺られて1時間。
海鳥の楽園【天売島】です。

すべては、80万羽のウトウに会うため!!!

ウトウ(写真提供:北海道海鳥センター)

ウトウ
ウミスズメ科、体長38センチほど。
全体に黒っぽく、お腹は白、
オレンジのくちばしとその付け根上部にポコンと突き出す突起物が特徴的です。
日中は海で過ごし、日が暮れるとヒナのために陸へ帰ってきます。
子育ては陸で、地面に巣穴をほって行うのです。
その数80万羽。天売島は、世界最大の繁殖地です。

80万羽のウトウが、
人口280人ほどの天売島の夕空を染める光景を見たい。

ポコポコあいている穴は、すべてウトウの巣

ウトウが帰ってくるのは夕暮れ時なので、
それまでゆっくり島観光。

観音岬

歩いて3時間ほどで1周できてしまう島ですが、
見どころいっぱい。
海の青、雲の白、島の緑に感嘆の息が漏れます。

写真向こうに見えるのは焼尻島。
ぺったらこい(北海道方言:平たい)焼尻島にくらべ、
小高い天売島の道はまるで、海に続くよう。

島には学校もあります。
2019年現在、在校生9人の天売高校は定時制で、
日中はひっそりとしています。
踏むたびにギシギシいう廊下、
ダルマストーブを囲んで配置された職員室の机、
「冬になるとしばれて体育館の床が歪んじゃうんだよ~」
「卒業式1番の感動シーンで、
登壇者が歪んだ床につまづいて転んでな~」
というエピソードを聞きながらの校舎見学は、
生徒の賑やかな声まで聞こえてくるようでした。

島の方が岩場に連れてきてくれて、
何が始まるのかと思いきや「薪をひろってきて」。
波で流れついた白っぽい木を拾い集めると、
パチパチと火を起こして、殻付きのウニを中に…
ウニの口から、ふわりと煙が立てば「焚火ウニ」の完成です。

余分な水分が抜けてふわっとふくらむような身、
旨みが凝縮して、やさしい甘みを感じさせます。

「俺たちが最高だと思って普段していることを、
観光に来たお客さんにも体験してほしいんだよ」

島の方のお話も含めて、唯一無二の島時間をいただきました。

あっという間に日暮れ。
旅の目的、ウトウの帰巣とご対面です。

黒い点はみんなウトウ。素人カメラでは限界でした。

ポツポツと海からやってきた黒い点は、
いつの間にかしっかりとした形と質量をもって、
バサバサという羽音と、ヒュンッと風を切る空気とともに
島を覆うようでした。

「この先の道は鳥と衝突しやすいので、身を低くしてください!」

きっと、天売島以外では一生聞かないセリフ。

この感動は、島に来て、目で見て、耳で聞いて、肌で感じないとわからない。
天売島の魅力に浸ったわたしは、
るもい地域人として、少し成長したような、誇らしい気持ちになったのでした。

ウトウの帰巣は6月から7月がピークです!
夏は高速船が30%割引!
今週末7月20日、21日は【ウニまつり】も開催!

天売島のウニを堪能して、
ウトウの帰巣に圧倒されて、
島時間を満喫する休日…
夏の思い出を飾ること間違いなし!
週末は天売島へ!!!

>>羽幌町役場
>>羽幌町観光協会
>>羽幌沿海フェリー